中部電力との資本提携戦略

狙いは「FIT制度に依存しない再エネ普及」

新電力のLooopと中部電力が資本業務提携を発表。Looopの太陽光を中心とした再生可能エネルギー事業に関するノウハウと、中部電力の電力小売事業の基盤や経営資源を融合し、「ポストFIT」を見据えた再生可能エネルギー・分散電源関連の新サービス創出を目指すという。

2018年9月28日に東京都内で記者会見を開き、資本業務提携を行うと発表した。両社の持つ顧客基盤やノウハウを生かし、再生可能エネルギーを活用したサービス開発などを共同で行っていく。Looopが実施する第三者割当で発行する新株式を中部電力が引き受け、10.25%を出資した。中部電力の出資額は非公開。

 

 

2011年に創業したLooopは、再生可能エネルギーの普及を理念に掲げ、これまで太陽光発電発電事業や、電力小売事業を展開してきた。太陽光発電所は2000カ所以上の開発実績があり、電力小売り事業では約20万件の顧客を持つ。

 今後はこうしたLooopの太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業や知見やノウハウなどと、中部電力の旧一般電気事業者としての電力小売事業の基盤や、経営資源を融合。再生可能エネルギーや、分散電源向けの新しいサービスを開発・提供していく。

 現時点では以下の4点のサービス開発に注力する方針だという。

・太陽光発電設備の調達、施工、O&M(運用保守)と余剰電力の買い取りなどをパッケージにしたサービスの提供

・太陽光発電設備と蓄電池をパッケージにした、系統安定化を目的とする需給調整サービス

・卒FITのお客さま(2019年11月以降、FIT制度の買取期間が終了する住宅向け太陽光発電設備)からの余剰電力の取引を実現する

 サービスの提供

・地域新電力と協調したエネルギーの地産地消を実現するビジネスモデルの提供

 

2018年8月から東京電力ホールディングス管内の高圧電力において、Looopが中部電力の取次事業者となるなど、両者は以前から提携関係にある。さらに踏み込んだ今回の資本業務提携は、Looop側からの提案がきっかけになったという。

 会見に登壇したLooop 代表取締役社長の中村創一郎氏は「今回出資を受け入れた最大の理由は、FIT制度に依存しない再生可能エネルギーの普及を実現するため」と話す。

 日本では2012年にFIT制度がスタートし、太陽光を始めとする再生可能エネルギーの普及が進んだ。一方で、買い取りにかかる費用を「再エネ賦課金」として国民が負担するかたちになっている。そのため今後は発電コストの低減と同時に、FIT制度に依存しないかたちでの普及モデルの実現が期待されている。

 

 中村社長は「これまでの日本の再生可能エネルギーは、再エネ賦課金というかたちで国民の皆さまの力を借りることで普及が進んできた。しかし、今後はFIT制度からの自立した再エネの拡大が必要。再生可能エネルギーを中心としたエネルギーフリー型社会の構築を目指すLooopはそれを実現したい」と話す。そして、「そのためにはさならなる再生可能エネルギー電源のコスト低減、分散電源の普及、さらにはITやデジタルなどの仕組みを開発・活用して分散電源を効率よく管理し、低コストにエネルギー供給が行えるサービスを実現する必要がある。これらを実現するにはITなどの技術開発などが必要であり、そのために中部電力から出資を受け入れることを決めた」と述べている。

 

 また、Looopがこうしたビジョンに基づく提携先として中部電力を選んだ理由は、今後の日本の再生可能エネルギーに対する考え方の面で、共感する部分があったからだという。

 

 会見に登壇した中部電力の執行役員 販売カンパニー事業戦略室長 大谷真哉氏は、「今回の資本業務提携については、半年ほど前から検討してきた。将来のエネルギー供給体制は、分散電源が入ってくることで変化が生まれるだろうと考えている。そして、分散電源を活用した次世代のコミュニティにおいては太陽光発電が1つのキーになると見ている。Looopは太陽光発電に関して、設備の調達から顧客への設置、その後の運用までのノウハウを持っている。斬新な料金プランの構築など、電力小売事業の実力も評価しているが、“新電力と提携した”というよりは、再生可能エネルギーに関する実力を評価した」と語っている。

 

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