RE100とは電気を全て再生可能エネルギーで賄おうという取組み
RE100とは、企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアティブがあり、世界や日本の企業が参加しています。国際環境NGOのThe Climate Group(クライメイト・グループ)が2014年に開始した国際的な企業の連合体です。RE100のREはRenewable Energyの略で日本語では再生可能エネルギー(再エネ)のこと。
※RE100への参加企業についてはRE100ホームページをご参照ください。
環境省は、2018年6月にRE100に公的機関としては世界で初めてアンバサダーとして参画し、RE100の取組の普及のほか、自らの官舎や施設での再エネ電気導入に向けた率先的な取組やその輪を広げていくこととしています。
RE100は世界に広まっており2020年1月31日時点では、世界的な企業を中心に221社(日本企業30社)が加盟しています。
ここで言う再生可能エネルギーとは以下の様なものです。
太陽光
水力
風力
地熱
バイオマス
RE100の加盟条件
RE100の加盟対象となるのは以下の4項目のいずれかを満たす影響力のある企業です。加盟の費用はゴールド会員が15,000ドル、ベーシック会員が3,500ドルで、ゴールド会員になるとイベント登壇などの特典があります。
1. 世界的な企業、または国内で認知度や信頼度が高い企業
2. 主要な多国籍企業(フォーチュン1000または同等の企業)
3. 電力消費量が100GWh以上(日本企業は10GWh以上)の企業
4. RE100の目的に貢献できる、特徴や影響力を持っている企業
The Climate Groupとパートナーシップを組んで日本企業のRE100加盟の窓口となっている日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)によると、特に重視されているのは消費電力量であるといいます。しかし、日本企業の基準では10GWh以上に緩和されているそうです。また、RE100へは基本的にはグループ企業全体で加盟することを求められます。ただし、親会社とのブランドが明確に分離していて子会社で1TWh以上の消費電力がある場合は子会社のみRE100へ加盟することもできます。
加盟対象外となる企業もあり、発電・発電関連事業が主要な収入源となっている企業、化石燃料推進・再エネ普及を妨害するロビー活動を行っている企業などは加盟できません。再エネ設備メーカーは一定の条件を満たすことで加盟できます。
企業の規模が条件になっているので、現時点での中小企業の加盟は難しいでしょう。
公約も必須
RE100に加盟するには企業活動で必要なエネルギーの100%を水力や太陽光などの再生可能エネルギーで調達することを公約します。具体的には以下の3つのいずれかの条件を満たしている必要があります。
- すでに電力の100%を再生可能エネルギーから得ている
- 再生可能エネルギー100%達成への明確な戦略とタイムテーブルがある
- 再生可能エネルギー100%達成に向けたロードマップを加盟12カ月以内に作成すると約束できる
RE100では外部から調達するエネルギーの使⽤(主に電⼒)に関するすべてと⾃社で使用する燃料(輸送や熱の生産、発電を伴わない用途の化石燃料使用を除く)について再生可能エネルギーを利用することが求められています。
遅くとも2050年までに100%を達成することが求められているため、それを実現できる計画が必要です。中間目標としては2020年30%、2030年60%、2040年90%の達成が推奨されています。加盟企業は目標に向けた進捗について、年次で総電力消費量と再生可能エネルギーの総使用量を含む報告をする義務があります。
2020年…30%
2030年…60%
2040年…90%
ただし日本においては、諸外国と比べて再エネ環境が遅れていることを考慮して、これらの中間目標は必須ではなく推奨となっています。
再エネ化の具体的な方法は、以下2種類です。
自社で発電した電気を事業に使用する
再生可能エネルギーによって発電された電気を、外部から調達する
このように、自家発電をするほか、太陽光発電などをしている事業者から電気を購入することでも、再エネ率を上げられます。
目的は脱炭素社会への移行
RE100の目的は、脱炭素社会への移行です。日本でも「FIT制度(固定価格買取制度)」など、再生可能エネルギー普及のための取り組みが行われていますが、現在でも電力のほとんどは火力発電によって賄われています。
経済産業省の資源エネルギー庁の統計によれば、2019年6月分の電力の発電方法の割合は、以下のとおりです。
火力発電…77.7%
水力発電…12.1%
原子力発電…7.5%
新エネルギー等(太陽光・風力・地熱・バイオマス・産廃物発電)…5.0%
※新エネルギー等のうちのバイオマス発電と産廃物発電は火力発電にも含まれているため、合計は100%にはなりません
火力発電では、主に石炭やLNG(液化天然ガス)などを燃料にして発電しています。
石炭などは有限な資源であるため、使い続ければ将来的に枯渇のリスクがあります。さらに、これらを燃料にする火力発電では、二酸化炭素の排出の問題も見逃せません。
その点、再生可能エネルギーは自然界に無限に存在するため枯渇する心配はありません。さらに、発電時に二酸化炭素も排出しないため環境にも優しくなっています。
つまりRE100は、再生可能エネルギーだけで事業運営を行うことで低炭素社会を実現しようとしている、地球環境に優しいプロジェクトなのです。
加盟企業のメリット
ESG投資において、投資家からの評価が高くなる
RE100に加盟することの大きなメリットは、「ESG投資」などにおいて、投資家たちからの評価が高くなることにあります。
ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」の頭文字を取ったものです。
ESG投資では、この3つが企業評価の指標となっています。
業績が良くても、環境に配慮しておらず、社会貢献をしていないと見なされた企業はESG投資では評価されません。
ESG投資は、欧米などで広く浸透しており2016年時点で世界の投資額の26.3%を占めています。
そのため経営者たちは、投資家たちから評価されるためにもESGを考慮した経営をする必要があります。
先ほども説明したとおり、RE100は二酸化炭素排出の低減を目指した、地球環境に優しいプロジェクトです。
RE100に加盟すれば、その企業はESG投資でも投資家たちから高い評価を受けられます。
将来的な化石燃料の高騰リスクを回避できる
RE100に加盟することのもう一つのメリットは、将来的な化石燃料の高騰リスクを回避できることです。先ほども説明したとおり、現在の日本は、石炭などの化石燃料を使った火力発電が中心です。
石炭は有限な資源であるため、使われれば使われるほど、数が少なくなります。数が少なくなれば、将来的な価格の高騰は避けられません。
燃料の価格が高騰すれば、上がった分のお金を支払うのは、電力会社から電気を購入している人たちです。
その点、再生可能エネルギーのみで事業運営ができれば、火力発電をしている電力会社から電気を購入する必要はありません。つまり、化石燃料の価格が高騰しても、その影響を受けずに済むのです。
また、RE100に加盟すれば、再エネ先進国の企業とも情報交換ができます。
具体的な再エネの進め方などが聞けるのも、日本の企業にとっては大きなメリットです。
RE100は中小企業にとっても重要
先ほども説明したRE100の加盟条件を考えれば、中心企業がRE100に加盟するのは、ほぼ不可能だと言えるでしょう。
しかし、RE100は中小企業にとって、決して人ごとではありません。
なぜなら、RE100の加盟企業のなかには、取引先にも再エネ化を求める企業もあるからです。
例えば、RE100の加盟企業の一つであるイオンは、提携企業にも再エネ化の協力を求めています。
同様にRE100の加盟企業のアップルでは取引先を選ぶ基準としてその企業が再エネ化に取り組んでいるかを含めると公言しています。そのため、ビジネスチャンスを逃さないためにも、今後は中小企業でも再エネ化の取り組みが重要になってくるのです。
J-クレジットとしてCO2削減分を現金化できる
再エネ設備を導入すれば「J-クレジット制度」を利用して、現金を得られます。
J-クレジット制度とは、中小企業などが再エネ設備を導入したり、森林の管理をしたりすることによって、二酸化炭素などの温室効果ガスを削減した際、それを国が「クレジット」として認証する制度です。
このJクレジットは購入希望者に販売できます。
クレジットを購入した企業は、購入した分だけ自社での二酸化炭素の排出量を減らしたと見なされます。これにより、購入側の企業も環境配慮への取り組みを対外的にアピールできるのです。
販売側にはお金が入り購入側は企業評価が向上するため、J-クレジット制度は双方にメリットのある制度だと言えるでしょう。
温暖化対策への取り組みPRができる
J-クレジット制度を活用することで評価が高くなるのは、購入側の企業だけではありません。むしろ再エネ設備を導入しているクレジットの販売側の企業の方が、対外的な企業の評価は高くなると言えるでしょう。
なぜなら、再エネ設備を導入している時点で二酸化炭素の排出量の削減、ひいては地球環境に配慮していることになるからです。再エネ設備を導入した企業は温暖化対策に取り組んでいることをアピールできます。
企業のお客さんに対してはもちろん、先ほど紹介したESG投資においても高い評価と信頼を得ることができます。
新しい取引先の開拓の際、有利になる
再エネ設備を導入していれば、新しい取引先の開拓にも役立つはずです。
先ほども説明したとおり、RE100の加盟企業のなかには取引先にも再エネ化を求めているところもあります。こうした企業と取引したい場合、再エネ設備の導入は十分なアピールポイントになります。
RE100に加盟していない企業が相手でも、再エネ設備があることを話せば相手の企業から好印象を得られる確率は高いと言えるでしょう。
RE100は、世界的な注目を集めている国際イニシアチブです。加盟した企業はESG投資などで高い評価を得られるほか、将来的な化石燃料の高騰リスクにも備えられます。
RE100に加盟できない中小企業も再エネ化を進めることでこうしたメリットを享受できるので、ぜひ再エネ設備の導入を検討してみてはどうでしょうか?
背景をまとめると
地球温暖化→CO2削減→省エネ→再エネ→RE100→PPA
なぜ今RE100、PPAという言葉がよく出てくるのかを順を追って再確認していきます。
まずパリ協定はほぼ全世界のすべての国が一つの目標に向かって一致団結し、各国の温暖化対策を定めました。
ここで言う目標とは、一言で言えば
「世界の平均気温を1.5℃以内に保ち、21世紀末までに温室効果ガス排出量を実質0にする。」
という事です。
そうしないと全世界は自然崩壊によって破滅の道を歩むことになるだろうと予想しているからです。
当然、ここでは主に温室効果ガスの発生を伴うエネルギー分野において省エネを推進することが叫ばれました。
まずは無駄な資源を使わないことが最も手軽に、そしてすぐに取り組める分野です。
しかしそれだけでは対策として限界があるため、次に再生可能エネルギーで二次エネルギーを創出するという事になります。
太陽光、風、水、地熱等の資源で電気や熱をつくるという事です。
再エネを投資対象にすることにより普及させ、どんどん広がっていきます(FIT)。
しかしそれを使ってくれる人や会社がないと持続していかないのです。
つまり再エネを持続可能なエネルギーにするためには、再エネでつくる電気をずっと使ってくれる対象がないと再エネへの投資は当然続いていかないのです。
今の日本はFITによって国、つまり国民全体で再エネを買い上げている状況下にあります。
しかしこれでは持続可能性がありません、いつか破綻してしまいます。
従って早く再エネを経済原理の中に取り込んでいかなければなりません。
そのためのイニシアティブ、それがRE100なのです。
RE100とはリニューアブル・エナジー(RE)100%という意味で、つまり再生可能エネルギー100%ということです。
「私たちはいついつまでに自らが消費する電気を100%再エネにします」という宣言をするのです。
2014年にイギリスに本部を置く国際環境NPOのThe Climate Groupeが中心になってこの団体を設立しました。
グーグル、アップル、フェイスブック等のIT関連企業やネスレ、ナイキ、BMW等2020年1月31日の段階で221社が加盟し、近年日本でもリコー、積水ハウス、アスクル等30社が加盟しています。
もうすでにグーグルのように100%再エネを達成した企業も出てきています。
これは全世界的な動きになっており、今では世界の投資マネーもCO2を大量に排出する石炭の火力発電投資をしている企業や化石燃料で作られた電気を大量に使用する企業の株には向かわないようになっています。
このような動きもRE100に加盟する企業の動きを助長しているのでしょう。
ではPPAとはなんぞやという事です。これはPower Purchase Agreement(電力購入契約と訳されます。)です。
先ほど申し上げたFIT電気は、再エネ由来ではあるけれども環境価値を持つ再エネではありません。
何を言っているの?と思われる方もおられるでしょうが、実はFIT再エネ電気は国民全体で賦課金の支払いにより買い上げているため、その環境価値は広く国民に帰属するとされています。
それでは日本はほとんどがFIT再エネなのに、どのようにして環境価値のある再エネ電気を使うことができるのでしょうか。
実はこの動きを背景に、環境価値のある再エネは市場価格が高くなっています。
手っ取り早くグリーン電力証書や非化石証書等の証書を別途購入することで環境価値を買う事もでき、現在はこの方法もよく使われていますが、環境価値をお金で買う事や再エネを増やすことに貢献していない(追加性がない)としてどちらかというと消極的な企業が増えています。
そこで出てきたのがPPAという手法です。
PPAも種々ありますが、一番わかりやすい手法としては屋根又は屋上に設置した太陽光設備からの電気を直接給電する手法です。
自家消費とあえて言わないのは、建物の所有者でない第三者が設置することになるからです。
つまり第三者が太陽光設備を無償などで設置し、発電した再エネ電気をその下の建物で消費し、その再エネ電気への対価を第三者に支払うというモデルです。
FIT制度のないアメリカではこのPPAという手法で再エネ設備がどんどん増えていきました。
今や欧米では当たり前の手法になっていますが、日本でもRE100企業の加盟の増加とともに加盟企業のサプライチェーンにも再エネ比率を要求してくることから、これからどんどん増えてくることが予想されます。
その他の取組み
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