STP分析とは?
STP分析とは、Segmentation(セグメンテーション|市場を細分化する)、Targeting(ターゲティング|狙うべき市場を決める)、Positioning(ポジショニング|自社の立ち位置を見極める)の3つを軸に分析するマーケティングのフレームワークです。
競合が多い業界内で、自社がどういう商品・サービスを提供し、顧客企業に対しどのようにアプローチすべきか、明確化するのに貢献します。
STP分析により、業界内でどのようなマーケティング戦略が有効かを把握できるので、新規の市場を開拓する際に勝ち筋を見出せます。また、推進中の既存事業を改善する上で、適切な戦略が取れているかを判断するのにも役立ちます。
新規開拓と事業改善に役立つSTP分析の方法
1.事業の目的とゴールを明確にする
どんな事業にも果たすべき目的、目指すべきゴールが存在します。まずは自社の事業が何のためにビジネスを推進しているのか、何を達成すれば良いのか、明確に言語化しましょう。
STP分析は観点次第でさまざまな結論が考えられます。事業の目的とゴールを明確にしていれば、複数の選択肢の中で、自社が本当に狙うべき顧客企業やアプローチ方法にたどり着けます。
2.自社の商品・サービスを把握する
事業の目的とゴールに加えて、現状どんな商品・サービスを提供しているのかを把握しましょう。
その商品・サービスが、どの企業の、どんな悩みを、どのように解決するものなのか、言語化するようにしてください。
STP分析では、最終的に自社がどんな価値を提供するかを結論づけます。今ある自社の商品・サービスはそのまま使えるのか、一から企画し直す必要があるのかを検討する際に、ここでの把握が大きな意味を成します。
3.市場を細分化する(セグメンテーション)
事業の目的とゴール、商品・サービスを整理したら、「S」「T」「P」それぞれ要素ごとに調べて内容をまとめます。まずは「S」セグメンテーションの項目です。
ここでは、市場をターゲットとなる顧客企業の特徴やニーズといった共通する項目で細分化し、狙うべき市場を定める前準備をします。市場を細分化することにより、より自社の提供価値とマッチングする市場の分野を見つけやすくなります。
そもそも市場は「消費財市場」「生産財市場」の2つに分かれます。前者は個人、後者は法人や企業を想定した市場ですので、BtoBビジネスにおいては生産財市場の分析観点が必要です。
ただし、実際に商品・サービスを扱うのは企業の担当者(≒個人)なので、消費財市場の分析観点も持ち合わせておくことで、緻密な分析が実現できます。
▼BtoB事業で使える分析観点の主なもの
行動変数
(ビヘイビア変数) |
商品・サービス利用の経験有無、利用頻度や回数別に分ける
商品・サービス購入に至るまでのプロセス別に分ける
商品・サービス購入時のベネフィット別に分ける
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人口動態変数
(デモグラフィック変数) |
企業の人数、資本金、売上規模別に分ける
企業の担当者・購買者の年齢や役職、決済権の有無別に分ける
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地理的変数
(ジオグラフィック変数) |
企業の本拠地、店舗がある地域別に分ける
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心理的変数
(サイコグラフィック変数) |
商品・サービス購入時の購買動機別に分ける
顧客企業が抱えている悩み別に分ける
企業側の購買方針別に分ける
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これまでの顧客企業とのやり取りで自社が保有するデータがあれば、分析に活用するのがおすすめです。また、市場に関する分析データが調査会社にてまとめられているので、ネットで検索したり問い合わせたりするのもよいでしょう。
4.狙うべき市場を定める(ターゲティング)
細分化した市場の中で、どの市場に絞るべきなのかを定めるのが「T」ターゲティングです。
市場を定めるポイントは、細分化した市場の中で、「規模が大きく成長中の市場であり、かつ競合企業も少なく、顧客企業のニーズが見込まれる」部分を見つけ出すことです。
「3C分析」のフレームワークを活用することで、より精度高く狙うべき市場を見つけやすくなります。
また、市場を絞っていくにあたり、「6R」の観点で分析を進めると、効果的に狙うべき市場を定めやすくなります。
▼6Rについて
Realistic
scale
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有効な規模
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市場規模がどうであるか、という観点。一般的には規模が大きい方がビジネス拡大のチャンスもあるが、その分ライバル企業も多くなるデメリットも。
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Rank
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優先順位
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ターゲットとなる顧客企業が自社の商品・サービスに関心をもち、優先して手に取ろうとしてくれるか、という観点。
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Rate of
growth
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成長率
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市場がどれだけ成長しているか、という観点。成長期で認知度も上がっている市場は、最も事業参入がしやすい時期であるとされる。
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Rival
|
競合
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市場にどのくらい競合他社がいるか、という観点。競合が多ければ多いほど自社の商品・サービスが目に留まりにくい。市場規模や成長率とも関係性のある項目。
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Reach
|
到達可能性
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ターゲットとなる顧客企業に自社の商品・サービスを提供する上で、どのような導線か、という観点。物理的距離やネット環境下にあるか否か等が関係する。
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Response
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測定可能性
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販促の効果を測定できるか、という観点。事業推進する上で効果測定~改善を繰り返す必要があるので、市場を絞る時点で効果測定のアプローチ方法を検討する必要がある。
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【POINT】
市場を定める上で実践する選択肢として、3つのマーケティング手法があります。
自社の企業規模や競合の状況により取りうる手段が変わりますので、ターゲティングの観点とあわせておさえておきましょう。
無差別型マーケティング
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市場の種類に関わらず、同一商品・サービスで一気にアプローチをかけるやり方。幅広くリーチできるが、無駄も多く資金力が必要。
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差別型マーケティング
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複数の市場ごとに異なる商品・サービスでアプローチをかけるやり方。市場ニーズに合った戦略を打ちやすいが、市場ごとのケアで手間や労力がかかる。
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集中型マーケティング
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1つの市場に特化し、市場に合った商品・サービスでアプローチをかけるやり方。集中する分最小限の労力で効果を得やすいが、リーチが狭く、失敗すると致命的でもある。
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5.自社の立ち位置を見極める(ポジショニング)
市場には自社とよく似た競合他社が多数存在します。顧客企業の目線で、競合の中で自社がとるべき立ち位置を見極めるのが「P」ポジショニングです。
例えば、市場内に最大手の企業が競合として存在する場合は、その大手企業がアプローチしていない顧客企業をターゲットに据えたアプローチをかけるポジション取りをすれば、活路が見出せるかもしれません。
また、市場内に似たような商品・サービスが乱立している場合は、自社が提供している商品・サービスがどう違うのか分かりやすく差別化し、自社の商品・サービスに関心を持ってもらう必要があります。
自社の立ち位置を見極める上で、競合調査が欠かせません。手っ取り早いのは、自身が顧客企業の担当者になったつもりで、実際に競合の商品・サービスに触れる方法です。
また、マーケティングのデータ分析会社に問い合わせたり、業界の競合動向調査文献を調べたりするとよいでしょう。
【POINT】
手順としてS→T→Pの順番で紹介しましたが、この3つは順序を入れ替えて検討してもOKです。
例えば、先に競合調査により自社の商品・サービスをどのような立ち位置でアプローチすべきかを明確にした上で、市場を細分化し適当な市場へとターゲティングする、と分析を進めることもできます。
順番にこだわらず、「S」「T」「P」各要素の考えやすいところから考える、と柔軟に進めていきましょう。
6.結論を導く
3つの要素の検討が終わったら、分析結果を結論として導きます。細分化したどの市場に狙いを定めるのか、数ある競合の中で、自社がとるべきポジションはどこなのかを整理し、まとめましょう。ポイントは、最初に言語化した事業の目的とゴールに立ち返ることです。出した結論が事業の目的を果たすか、結論通りに推進するとゴールを達成する見込みがあるか、冷静に判断します。
7.アプローチ方法(マーケティング施策)を決める
STP分析により、市場でのねらい目や立ち位置を判断できますが、ここで終わりではありません。
ターゲットとなる顧客企業に対し、自社がどの商品・サービスで、どのようにアプローチすると良いか、マーケティング施策の検討まで進めるようにしましょう。また、自社がいま提供している商品・サービスを振り返り、大きく路線変更が必要か否かも判断が必要です。
アプローチ方法については、自社の強み・弱みをもとに検討する「SWOT分析」や、マーケティングの構成要素である「4P分析」を併用すると、より効果的な方法を導けます。
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